◆忘れられた柱

 旧桟橋の端

 暑い日差しでした。島からの帰り、ぽつんと立っている木製の柱を桟橋から眺めていたらいろんな思いが去来しました。 

 

 この柱、先端で時折トンビとカラスが場所取り争いをするくらいで、今は何にも使われていません。もちろん、カメラを向けたり、しげしげ観察したりする人など見たこともありません。 

 

 元来は旧桟橋の外灯として使われていたようです。近寄ってみると昇降用のボルトも残っています。

 

 蘇る17文字

 太平洋戦争の空襲や風雨に耐え、接収時のどさくさも見つめてきたことでしょう。

 島内の木々は70余年前の面影を残さないまでに緑豊かに成長し続けていますが、この柱は静かに朽ちてゆくだけです。

 

 存在する大方のものは朽ち果てて、やがていつの間にか人々の記憶から消えてゆくのですが、この柱ときたら姿を消す前からすでに忘れられた寂しさを漂わせています。

 

 八月や六日九日一五日(詠人不詳)

 夏日差しを浴びながら柱を見ていたらこの一句も思いだしました。

 普段はすっかり忘れているのに、夏の日差しと8月の声を聞くと条件反射の如く蘇えってくるのです。

 巧拙は知りませんが忘れ難い一句です。(木)

 

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