◆煉瓦の刻印

 愛知産の証拠

 この刻印、とある秘密めいたところにあるのでガイドなしで探し当てるのは、ほぼ不可能でしょう。さらに、そこは薄暗いので明かりを当てないと判読するのは困難です。

 

 何の刻印かといいますとレンガ(煉瓦)の産地を示す証拠の刻印です。以前当コラム「煉瓦の芸術」で紹介したように、猿島の大部分の煉瓦は愛知で焼かれたものです。

 

 刻印を読んでみますと、「愛知名古屋 東洋組瓦磚(がせん) 〇造所之印」といった文字が確認できます。

 猿島全体では百万個以上の膨大なレンガが使われていますが、刻印が露出しているのはここだけの貴重なポイントです。

 

 露出は偶然

 明治維新で失職した士族の救済のために愛知の県令国貞廉平(元長州藩士)は化学工業の先駆者宇都宮三郎の助言を得て「士族生産懇話会」を設立、これが発展して東洋組となりました。

 東洋組では煉瓦やセメントを製造、煉瓦は猿島のほか皇居の造営、陸軍省、工部省などへも広く納入されました。

 

 煉瓦の刻印は、一般には模様や1文字が多いようで、一定の製品数(10個とか100個とか)に対して1個などとつけられるようですが、東洋組の場合のルールは不明です。

 

 ところで、この刻印のように読みづらかったり小さかったりする場合は、まずスマホで撮影して拡大、ゆっくり読むことにしています。

 メモや記録代わりにもなる結構便利な手法ですので、ご存じでなかった方はこの刻印で試してみたらいかがでしょう。(木)

 2023年5月

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